ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
21 「3密」は新型コロナウイルス感染の原因ではない
−ISO9001規定で考える(是正処置)−
時事問題を事例とする規格解釈
<91-02-21>
  緊緊急事態宣言解除の後の緩和された外出・営業自粛の下で国民や事業者が守るべき処置として「新しい生活様式」なるものが決められたが、中身は「3密」の回避,手洗いの徹底、マスクの着用、人との間隔(2メートル)の確保であり、それまでと基本的に変わっていない。これが、問題の発生を防ぐ対策(管理用語では「再発防止対策」) の企画と実行による新規感染者数の減少・維持を図る「管理」を意図したものであるなら、それが効果的、効率的であるかどうかは、実務の「管理」の常識、或いは、ISO9001の「是正処置」の規定との比較で評価、推定できる。結論的には、「新しい生活様式」に基づく感染減少・維持の管理は、「管理の常識」とISO9001の論理と解離しており、この意味で結果は期待できそうにない。
 
  組織の品質管理の実務では例えば、不良品が出た場合にその“原因”が水中の異物による配水管の詰まりであるならば、詰まりの“要因”は異物によるフィルター目詰まり、定期清掃のもれ、原水中の想定外異物の混在であり、“処置”として異物付着フィルターの交換では異物が原水起因である以上は再発防止に十分でなく、使用する水を工場内循環使用水から浄化処理された新規受入れ工業用水道水に変えるという“処置”が決定されることにもなる。
すなわち、効果的な再発防止対策であるためには、“原因”を突き止め、“原因”をもたらす“要因”を分析し、“原因”を取り除くのに重要な“要因”を見極めて、これに対して効果的な“処置”をとらなければならない。
   
   ISO9001では、再発防止対策としての”処置”は「是正処置」と呼ばれ。「不適合の原因を除去して再発を防止する処置」と定義され(ISO9000: 3.12.2)、「是正処置」では「原因を特定し、必要な処置をとらなければならない」と規定している(ISO9001:10.2.1)。この意義について、解説書及び審査の場ではしばしば、上記の「フィルター目詰まり」は“真の原因”ではなく、原因の調査では“真の原因”たる「原水の水質」に行き着くまで“なぜなぜ”を繰り返す、これに対して浄水の使用という“処置”で“原水起因の異物”という“原因”を除去して初めて効果的に再発を防止できると説明される。
コロナウイルス感染の原因は、既感染者が発出する飛沫の中のウイルスが未感染者の体内に侵入することであり、侵入は飛沫を直接浴びる、及び、手等が飛沫ウイルス付着の物品、物体と接触することを通じての2つの経路で ウイルスが口、目、鼻の粘膜にとりつくことで起きる。「新しい生活様式」に基づく管理では、これを“真の原因”として、「処置」は既感染者の市中での存在と、ウイルス侵入との両「要因」に対応する隔離と、侵入経路遮断に向けられなければならない。
 
   「3密」は感染の原因ではなく、飛沫を直接浴びることの「要因」であり、これに対する防護の「処置」がマスク着用である。手洗いは物品、物体との接触という「要因」に対する「処置」であり、人との間隔は「3密」の程度の一つの尺度ある。  マスク着用は「3密」の悪影響を緩和する「処置」である。   「3密」による飛沫との直接接触を防護する「処置」の マスクを着用したのだから、重要なのはマスク着用の飛沫防御性能の管理である。これに応じて回避すべき「3密」の程度、例えば人との間隔は緩和できるのであり、医療従事者のようなマスク着用では最大限の「3密」の中での作業さえ人との距離の管理を無用にすることができる。
   
  然るに、「新しい生活様式」に基づく管理では「3密」が強調され、マスク着用との関連でも、1時間歩いても数人しか出会わない道でもマスクをつけ、マスクをした児童が校庭で両手を拡げて整列し、店員がフェイスシールドを付けた上にマスクをし、映画館ではマスクの観客が定員の1/10程の座席にパラパラと座る一方で、鼻や口元が見えるようなマスクのコロナ禍対応責任者の中継映像が流され、風通しが良いと称するマスクの発売が報じられ、更には「3密」で人々が行き交う地下鉄が運行しているのに、マスクの人々が無言で正面を見つめて整然と座り続けるパチンコ屋が「3密」という理由で営業を非難されるという奇妙な実態をメディアが肯定的に報じている。
 
   また、「新しい生活様式」に基づく管理で最も問題なのは、上記のウイルス侵入と合わせて感染の二大要因のもうひとつである既感染者の市中存在に対する「処置」が、事実上存在しないことである。唯一の「処置」は「基本的生活様式」にある発熱患者への要求であるが、相変わらずの「発熱がある場合はムリせず自宅で療養」となっている。既感染者の市中存在に対する「処置」として世界の常識である感染者の検出と隔離には、少なくとも「発熱がある場合は速やかにCPR検査を申請」であるべきだ。
   
   「新しい生活様式」による感染者数減少・維持の管理には、「再発防止対策」のISO9001の規定と実務の常識である「原因→要因→処置」の原則の観点が欠けている。 「新しい生活様式」に基づく感染者数減少・維持の管理は、「再発防止対策の管理」の方法論の観点から、結果が効果的、効率的のいずれであることも期待出来そうにない。

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サニーヒルズ コンサルタント事務所