ISO9001/ISO14001 情報発信
22 顧客満足
−政府のコロナ禍対応では感染防止も経済活動も同時に−

ISO9001で考えるコロナ禍対応
<ISO 時事寸評>>
  日本方式でコロナ禍を乗り切ったとして緊急事態宣言による外出自粛・営業規制を解除した後にも続く東京だけでなく全国的な感染者数の増加に不安を抱く国民に対して、政府、知事の言い分は「経済を回す必要がある」とし、現今の感染者数の増加は医療体制崩壊を招く事態ではないと強弁して、感染防止の何の対策も講じないでおり、大方のメディアもこれに同調している感がある。
 
  しかし、国民は感染の心配なく働き、生活を楽しめる状態になることを切望しているのであり、それを可能にする施策を求めている。感染防止も経済発展のどちらもが憲法に基づき政府が国民のために実現、維持を図らなければならない「健康で文化的な生活」の要素である。感染防止か経済活動かの二者択一の問題ではなく、両方を解決することが政府の責任である。
 
  似たような珍議論が、ISO9001の00年版で狙いが「不良品を出さない」ことから「顧客満足の向上」に変わった時に起きた。この時は耳慣れない「顧客満足」という言葉に「これ以上顧客満足を追求すれば会社が潰れる」「会社満足も必要」というような不満の声が認証組織から上がり、JIS規格書には「顧客満足をかろうじて達成した状態でよい」との珍解釈が付された。
 
  しかし正しくは、顧客満足追求の規格であるので、コストや収益など他の要素に触れていないだけである。規格が顧客満足の追求を必要とするのは、組織の発展を図るためだからであり、顧客に製品を買ってもらうためには組織は顧客に受け入れられる機能、品質の製品を提供しなければならない。顧客満足追求は組織の発展のためであると知ると、その目標や施策の決定がコストや収益を無視してよいということでないことがわかる。組織の存続、発展のためには組織は、「顧客満足」とコストや収益の両方に同時に取り組まなければならない。今日では認証組織がこのように顧客満足を正しく理解している証拠に、認証組織が顧客満足を追求し過ぎて赤字で倒産したという話は聞かない。
 
  「顧客満足の追求」に当たる組織の品質保証業務の実務においては、製造業を例にとると、顧客からの製品不良の苦情に対する品質向上の対応には一般に、製造現場からはそのような製造方法の変更ではコストが上がり、又、全体生産に支障が生じるといったような不満が持ち出されることが普通である。対応にあたる品質保証部門は、これら不満を含み製品不良対策がもたらす事業へのすべての観点の問題を評価して調整し、当該製品不良の確実な防止を第一としながら他の要素をも考慮した組織としての最適解としての製造と管理の方法を決め、顧客満足の向上、維持を図る。
 
  しかし、苦情の製品不良が顧客にとって深刻な場合、或いは、新しい不良で原因や効果的な対策が俄かには思い当たらない場合は、コストや工場の全体の生産性なども無視して、考えられ、可能なあらゆる手段を動員し、製品不良発生防止が絶対に確実である方法を採用する。つまり、現場用語では“特別管理体制”の下で、顧客からの信頼継続を最優先する。このような“特別管理体制”の下で製造、出荷を続けながら、研究的或いは現場試験的に原因の追求を行ない、効果的でしかし無理のない製造方法を確立し、顧客の了承を得て“通常生産体制“に切り換えるという経過をたどる。
 
  政府の上記コロナ禍対応における経済活動無視の感染防止対策としての緊急事態宣言による外出自粛・営業規制の処置は、その内容の非効率性はともかくもISO9001の顧客満足追求のための組織の品質保証業務の実務における“特別管理体制”に相当するとして妥当だったと考えられる。そして、その狙いの通り、感染拡大の火消しに成功した。従って、今日の感染者数の再増加と、感染防止か経済を回すかの二者択一論議は、宣言期間中に、個別の感染原因を見極め、人々及び事業者の必要な技術的対応処置を明確にし、その実行を資金的に支援し、必要物資の流通を整備し、また、感染管理体制を確立するという、管理の常識の手順を踏んだ上で宣言解除、つまり“通常生産体制”に移らなかったことの結果である。
 
  有事法制とか働き方改革等々、将来の、理屈だけで済む立法や政策決定は人事権で官僚を支配し、絶対多数を背景の強行採決で可能だが、コロナ禍対応のような現実の、結果の見える課題は、正しい論理と実務の常識に則った思考と方策の実行をしない限り解決できないということではないか。
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