ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修

   
論評
   ISO マネジメントシステム   時事評論
ISOマネジメントシステム規格に関係のあるする最新の報道、ウェブサイト、その他の情報について、
組織の利益に照らしての規格と認証制度の意義と有効性の観点から考えます。
   

、読者の本記事の使用による如何なる結果にも責任を負いません。
用いた情報の真実性には責任を負いません。情報の詳細、発信者の意図に関しては原情報をお読み下さい。


 
No.12    韓国の福島産水産物の禁輸措置を認めるWTO決定とISO9001の顧客満足  :  R1.5.1
  韓国による東北地方産水産物の輸入禁止措置を不当とする日本の訴えを退けた4/11のWTOの判断に納得がいかない安倍首相は、6月のG20ではWTO改革を提案するそうである。しかし、市場経済、自由貿易では、売手が放射能測定しているから安全だと言っても、買手が心配だから買わないと言えばそれまでである。
 
  禁輸措置が消費者に支持されている状況なら韓国政府が禁止措置を解除しても、消費者は買わないだろう。1980年頃の米国では政府が強める日本車輸入抑止圧力に呼応して自動車労組が日本車をハンマーで壊して気勢を挙げる場面がテレビで放映される一方で、同様に排斥対象だった鉄鋼材料を製造する工場の巨大な駐車場には日本車がずらりと並んでいたという事実がある。
 
  現代マーケティング論では、自分の意向や想いに応えられていると顧客が判断する商品しか売れない。「顧客満足」とは顧客の判断であり、組織が決めるものではない。ISO9001では、組織を永続的に発展させるには「顧客のニーズと期待及び適用される法規制を満たした製品サービスを一貫して提供すること」が必要とし(1.a)項)、「トップマネジメントがこのことに職を賭す覚悟で統率力を発揮しなければならない」と規定している(5.1.2項)。
 
  慰安婦、徴用工問題への意趣返しとの見方も、現代マーケティング論に照らすとあり得ることであり、動機不純と非難するに当たらない。今日では、顧客が商品を買うかどうか判断する時は、商品の機能や品質だけでなく、苦情対応など付随するサービス、更には経営の安定性をはじめ、例えば汚水排出、火災、粉飾決算、過労死など商品と無関係な出来事に対しても顧客が自分自身の基準を設けて評価するというのが常識だからである。輸出したければ韓国政府に圧力を掛けるのではなく、政治問題も含み韓国の消費者の意向や想いに働きかけなければならない。   → 詳しくは 
こちら

No.11    がっかり・やっぱり - 3/18の JABシンポジウム  :  H31.4.11
  前報(No.10, 3月14日)で、3/18のJABシンポジウムでは不祥事発生を許さない認証制度に向けての結論が出される可能性への期待を述べたが、入手した予稿集によると悪い予感の通りだった。前報(No.10, 3月14日)で、3/18のJABシンポジウムでは不祥事発生を許さない認証制度に向けての結論が出される可能性への期待を述べたが、入手した予稿集によると悪い予感の通りだった。登録証の不祥事防止の保証効果を否定してきたJABが主催するシンポジウムで、不祥事は防止しなければならないとか、防止できるというような発表が行なわれることは有り難いという予感である。
 
  果して同シンポジウムでは、初めに、飯塚悦功氏が主催者挨拶として、認証制度の狙いが不祥事発生時の迅速な対応であるとするJABの主張に沿って、発生した不祥事に対して認証機関に適切な対応の取組みをさせてきたと述べた後で、「(しかし、)今回は審査で不祥事の原因の不正行為を発見できるかを検討する」というように、以降の発表内容にしっかりとたがをはめている。
 
  このためであろう、次の山田秀氏の「社会で活用される第三者評価制度」と題した基調講演は、登録証の有無で社会が行動を変えるようになることが必要だと昨年と同じ言葉を繰り返しても、そのことと不祥事との関係には全く触れていない。本シンポジウムのテーマである認証制度がめざすべき姿たる「社会から信頼され活用される制度」かどうかには、登録証取得組織の不祥事発生の有無は無関係であるということである。
 
  シンポジウム本題の「不祥事事例に対する認証制度における対応方法の提言」では10社のデータ改竄不祥事を取り上げて、審査で発見できる可能性はあるが限界があるとし、その理由として抜取り調査とか意図的な嘘は見破れないなど従来と同じ言訳を持ち出している。 しかし、時間制約のためこのようにしか抜き取り調査できなかった、このように質問したのに偽造手順書、検査記録を見せられた等々、不正行為を見逃してしまった具体的な原因を証拠立てて明らかにしているのではない。結論ありきで調査した振りをしただけだ。また、不可能を可能にするためには、認証制度による支援が必要であるとして、ISO9001規格の条文と各種認証制度に係わる規定の変更を提言している。これも論理性、実務性に乏しく、提言が実現しないことを前提として空虚な提言である。
 
  このような空虚な発表、提言内容となるのは、登録組織の相次ぐ不祥事に対する世間の非難を慮って、その気のないのにこんなテ-マでシンポジウムを開くからである。JABはISO9001認証制度の登録証が、品質不祥事を発生させない組織であることを保証するものではなく、不祥事を発生させた場合に認証機関が速やかに組織に対策をとらせることを保証するものだと主張し、ウェブサイトでも説明している。それなら品質不祥事がいくら発生しても意に介さず、このシンポジウムのような小細工はやめて堂々としていればいいのではないか。副題のように認証制度が「社会に信頼されるには」、この方がよほど効果的な対応と思うのだが。 

No.10   社会に役立つ認証制度に向けての一歩となるか-3/18のJABシンポジウム H31.3.14
  ISO9001登録証取得組織の不祥事がまだ続く状況の中、3/18の今年のJABマネジメントシステム シンポジウムでは、登録証取得組織の不祥事への認証機関の責任を認め、具体的な対応策が提言されることも期待できる。すなわち、テーマは「認証制度が社会に認知され、信頼されるには」であり、昨年、登録証が信頼されているとは「顧客による商品購入先の選択、企業による外注先の選択、取引開始時の取引条件のひとつとする等の形で登録証の有無によって社会がその行動を変えることである」と述べた山田秀氏が基調講演を行ない、WG2報告が「不祥事事例に対する認証制度における対応方法の提言」となっている。
 
  しかし、問題は、そう簡単ではなさそうである。第一に国際的には「結果が大切(Output Matters)」を合い言葉に、認証機関に不良組織を峻別して登録証を与えない能力を持つことを求め、不祥事を起こした組織に登録証を与えた認証機関の処罰を含む具体的な認定基準の改定への3年間のIAFの取組みが、認定、認証機関の抵抗で挫折し、2009年の「認証に対して期待される成果に係わるIAF/ISO共同声明」により認証機関の責任の議論は事実上凍結することで決着してしまっているからである。
 
  また、国内では同じ時期に一連の著名不祥事により登録証への疑問の声が高まり、経産省によるガイダンス文書の助け船を受けてJABは2年間「有効性審査」の議論をした。しかしH22年に結論の報告書を出し、以降4年間のJABマネジメントシステムシンポジウムのテーマに登録証の信頼性を取り上げて形をつけただけで、「適合性審査」と何が違うのかを含み抽象論ばかりで具体策は何も出さないまま問題取組みを終息させた。
 
  3/18が社会に役立つ認証制度に向けての一歩となるかどうかは、山田氏が上記の昨年の言い方を更に進めて、「不祥事を起こす組織に登録証が与えられることがあってはならない」と言い切ることができるのかどうかにかかっている。しかし、これも相当難しそうだ。このシンポジウムの主催者のJABは、登録証は組織が不祥事を起こさないことの保証ではないとする立場であるからである。

No.9   ISO9001規格は不祥事防止に役立つのに、認証制度が役立っていない H31.2.27
  2/14付け中日新聞は、昨秋のKYB社の免震・制振装置の検査データ改竄不祥事の社内調査の結論を、データ改竄は製造と技術部門で協議した結果であり、工場責任者らも認識しており、組織的だったが、役員は認識していなかったと報じている。責任は現場にあり、経営者には責任がないということだ。しかし、ISO9001に照らすと、だから不祥事が起きて顧客の信頼を失って会社の存続が揺らぐ事態を招いたということになる。
 
  簡単に言ってISO9001は組織が不良品を出さないことにより顧客の信頼を得て事業を発展させるための指針である。ISO9001の規定の根幹は、製品の品質保証は現場の品質管理部門に任せるのではなく、収益や投資の管理と同じように経営の課題として経営者が主導し、かつ、全力で取組まなければならないということである。規格では、特有の杓子定規の表現に加えてJIS誤訳があって難解な文章となっているが、このことを4.1, 5.1項に明確にしている。経営者が品質保証を現場任せにせず、ISO9001に従ってその職責を果しておれば、現場をこんな不正に走らせることはなかった。
 
  しかし、認証制度ではISO9001は現場主体の品質改善活動の指針であるから、審査では品質保証とは直接関係のないと思われる品質方針やマネジメントレビューなど定められたトップマネジメントの業務に関しては規定への適合性を外見で評価するだけであり、規格の意図の経営者の品質保証に関する経営責任という観点の審査はない。認証制度が現場の品質不正防止に役立つ規格の規定を活かす適合性評価をしていないことが、一連の品質不祥事に関連しての認証制度は役に立たないという社会の不満の根本原因である。

No.8   品質不祥事を発生させた認証組織に対する認証機関の処分は大甘    H31.2.13
  JABの2/4付けのウェブサイトの不祥事発生組織に対する認証機関による処分の一覧表に見られる処分には、不祥事を発生させ登録証の信頼性を失墜させ、また、認証審査で審査員を欺き、不適合を隠したというような背景が全く考慮されていない大甘である。
 
  そもそも、普通の資格取得の試験とは違って、認証審査で不適合ゼロ、つまり、100点をとらないと登録証は貰えないし、100点とれる自信のある組織しか認証申請しない。なぜなら、不祥事などはもってのほか、不良品を出さず、顧客のニーズと期待を満たす製品の提供を確実にしていると自信を持っている組織が未知の顧客や社会にそのような組織であることを、認証機関に保証してもらうために認証審査を申請し、登録証をもらうのである。
 
  不適合を認証審査では見落としたという事実に対する責任は一義的に認証機関にあるが、認証制度の枠組みでは、製品検査をせずに、不良品を手直しせずに、試験値を改竄して出荷するというようことが永年見過ごされてきたという顧客第一からほど遠い品質保証体制の組織が、顧客第一でやっていますと嘘をついて認証申請することは想定していない。その上に審査で組織が不都合な事実を隠したり、嘘の説明をしたりしていたとすれば、認証制度の枠組みにおける不法行為に他ならない。
 
  認証制度の信頼を維持するには、また、認証機関の役割への正しい責任感を明らかにするためには、認証制度を悪用する組織には、せめて一発認証取消しとか認証申請受付け永久拒否など、善意の不適合に対するのとは異なる処分を課さなければならない。

No.7    ISO9001/14001認証機関 J-VAC社の認定失効JABの認定とは何か H31.1.31
   1/12中日新聞はJABは1/24付けのウェブサイトで、J-VAC社のJABによる認定が2/1付けで失効すると発表した。
 
  JABの認定基準、J-VAC社のウェブサイトでの事態の説明、及び、認定条件表で認定有効期限が本年1/31となっていることから推定すると、失効はJ-VAC社が認定更新審査に合格しなかった結果のようである。また、不合格の理由は、認定審査の中の立ち会い認証審査で、質問の項目や方法などに問題が指摘されたことであり、J-VAC社がこれに是正処置をとって、幾つかの組織の認証審査に認定審査員が立ち会ってその“有効性”を検証したが認められず、時間切れで認定失効となったものと推定される。
 
  ところで認定とは、認証機関が認定基準に従って適合性評価活動を効果的に行ない、品質、環境優秀組織を間違いなく選別する能力があることをJABが認証組織や社会に保証するものである。端的に言えば、この認証機関は、やたら不良品の多い、或いは、品質不祥事を起こすような組織に登録証を与えることはないという保証である。
 
  この観点で最新のJAB情報(品質データ改ざんなどの不適切行為報道に関連する認証について[12/19])を見るに、J-VAC社は近年の打ち続く認証組織の不祥事に1件も関与していない。表面的には、同社は効果的に優秀企業を選別し、登録証を付与していると見える。不祥事を出すような組織に、そんなことはしない組織だとして登録証を発行した認証機関が今も知らん顔をして認証事業を行なっているのに、適切に登録証を発行した認証機関が認定基準違反として認定の失効になる。JABの認定とは一体何なのか。

No.6   今年も認証取得組織の品質不祥事が発覚-審査は適切だったか           H31.1.13
  1/12中日新聞はISO9001認証取得組織LIXIL鈴木シャッター社が要員に法定の実務経験年数がないのを偽って検査員資格を取得させ、顧客の防火設備の法定定期点検業務を行わせていたと報じている。
  
 ISO9001登録範囲は「防火シャッターの設計、製造、施工」であるが、点検業務が製品の販売契約の一環として行われているのなら、「引渡し後の活動」として「管理された状態」で実行されなければならない(8.5.1項)。そのために、この業務が必要な職務能力を持つ要員に与えられ(同e)項)、必要な職務能力を持っているかどうかを判断する基準が明確にされ(7.2 a)項)、それに法定防火設備検査員資格の保持が含まれ(同b)項)、また、要員の入退職、異動を見据えて新たな要員にこの職務能力を持たせる教育訓練を行う(同c)項)ようになっているかに着目して審査は行われなければならない。  
  
  点検業務の結果のサービスたる製品の品質は、いざという場合にちゃんと機能することを保証できる点検と評価の技術的適切性である。しかし、これは事後検査で評価、実証できないから、点検が法定資格を持った検査員により行われたかどうかが、製品の品質保証にも、顧客の味わう顧客満足度にも重要な意味を持つ(8.5.1 f)項)。
  
  この分野に造詣の深い認証機関であるから、こんなことは承知の上の審査であったはずであり、日産自動車の昨年の同様の不祥事も知っているから、法的資格のない13人もの検査員に違法に点検させていたことを見落としたことには、どのように審査したかについての説明責任がある。
  
<実務の視点和訳 ⇔ JIS和訳>  職務能力 ⇔ 力量;

No.5   相次ぐ品質不祥事の原因は、認証制度の枠組では認証機関の登録証発行可否決定の手順の不遵守           H30.12.6
  昨秋以降の相次ぐISO9001認証組織である大手企業の品質不祥事に関する認証機関の責任をISOマネジメントシステム規格の認証制度の枠組みの観点から考えて見た。
   
  認証機関は、認証機関に対する要件を定めた規格ISO/IEC17021-1規格に則って認証審査を行い、登録証を発行しており、JABがこれを監視し管理している。同規格によると、登録証は認証機関が適合性評価活動、つまり、認証審査を行った結果で発行される(1章)。
   
  認証審査では審査員が規格の各規定に対する適合性を判定するための客観的証拠となる情報を、面談、業務実行の観察、文書・記録の点検(9.4.4.2項)によって収集し、評価し(9.4.4.1)、その中で適合或いは不適合の証拠を特定し(9.4.5.1)、不適合は不良のない顧客満足の製品を一貫して供給するという組織の能力に対する影響の度合いに応じて、「重大な不適合(影響を与える)」か「軽微な不適合(影響を与えない)」に分類する(3.11)。また、認証機関は不適合に対して組織に修正、是正処置を期限付きで求め(9.4.9)、とられた処置の適切性を判定し、重大不適合の場合は処置が有効であることを確実にしなければならない(9.4.10)。一般にはこれも審査員に委ねられている。
 
   登録証発行可否の判断は審査員ではなく、認証機関が定めた個人又は委員会が行う(9.5.1.1)。これら個人又は委員会は、審査員による監査結果の情報が登録証発行判断のために抜けがなく十分であるか、及び、不適合に対する修正、是正処置が適切或いは有効であることが明確になっているかどうかを評価して、登録証発行の決定を行う(9.5.2)。この判断が可能なように審査員は、適合、不適合を特定し、不適合を上記のように分類し、監査報告書に書かなければならない(9.4.5.1)。
 
  同規格(JIS条文)によると、ISO9001の登録証は「組織が品質マネジメントシステムをISO9001規格の要求事項に従って実施していること(序文)」を第三者に保証する手段である。これは不祥事に関連させて表現すると、品質不正が継続的或いは組織的に行われたり、或いは、不祥事を引き起こすような組織ではないことを保証するものである。この保証は、不良のない顧客満足の製品を一貫して供給するという組織の能力に影響するような重大な不適合が存在しないことを審査員が認証審査で客観的証拠で確認することに基づいて行われる。
 
  すなわち、登録証発行可否判断の基になるのは、認証審査で見出すことのできた適合、不適合ではなく、正しい可否判断に必要なすべての適合、不適合の証拠であり、不適合が修正、是正処置によって効果的に除去されたという証拠である。審査員は正しい登録証発行可否判断が出来るのに必要な適合、不適合を検出しなければならない。審査員は品質不正或いは不祥事に繋がる重大な不適合を見落としてはならず、認証機関は重大な不適合を見落とした審査結果に基づいて登録証発行を決めてはならない。JABの管理下の認証制度の枠組では、一連の品質不祥事は、認証機関が不十分な審査情報で登録証発行の決定をしたことが原因ということになるのである。
 
*1:ISO/IEC17021-1:2015
適合性評価−マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項−第 1 部:要求事項

No.4
  相次ぐ品質不祥事の原因はISO9001的には明白 - トップマネジメントのコミットメント      H30.11.20
  昨秋以降の相次ぐ大手企業の品質不祥事の原因の議論がインターネットを賑わしている。不祥事の性格も多様であり、内容も詳しくは分からないけれど、不祥事を発表する経営者の発言には共通点がある。どの経営者も、「明らかになった品質不正は遺憾であるが、このようなことが長期間にわたって現場で行われていたとは知らなかった」と主張している。この発言に鑑みると、これら企業が一様に認証取得しているISO9001規格の上では不祥事の原因は明白である。
 
  すなわち、規格は、不良のない顧客満足の製品を一貫して供給する顧客重視経営のために必要な品質保証関連業務の在り方を、種々の業務とその実行の手はず(手順、資源)の集まりとしての品質経営体制に関する必要条件として規定している。 08年版(5.1項)と15年版(5.1.1項)で表現は同じではないが、規格ではトップマネジメントは会社が不良のない顧客満足の製品を一貫して供給するように、この品質経営体制に則って顧客重視経営を行うことに「コミットメント」していなければならないと規定されている。
 
  ここに、「コミットメントする」とは、そのような顧客重視経営に「全力で取り組む」、「職を賭して取り組む」ということであり、目的を達成することへの自らに対する揺るぎない決意、他者に対する破ることのあり得ない誓約を意味する。トップマネジメントが不良のない顧客満足の製品を一貫して供給することにコミットメントしておれば、例え遠く離れた工場の一部門で行われたとしても、組織の消長に係わる重大な品質不正行為が長期間にわたって行われていたことを知らないということはあり得ない。いや、職場でこのような重大な不正行為が行われることなど絶対にないように、会社の業務を統率することを「品質経営体制に則って顧客重視経営を行うことにコミットメントしている」と言うのである。
  
  15年版(5.1.2項)の認証審査では、トップマネジメントは、不良のない顧客満足の製品を一貫して供給する「顧客重視」の経営を行うことにコミットメントしていることを実証するために、「顧客のニーズと期待が満たされている」「顧客満足向上が重視されている」「そうではなくなるリスクに取り組まれている」という状況で組織内の業務が行われていることを審査員に説明しなければならない。どのような説明をしてコミットメントしていると審査員を納得させたのかわからないが、顧客を裏切る品質不正行為が長期間放置されていたという事実は規格の規定に照らして、トップマネジメントが顧客重視経営にコミットメントしていなかった証拠である。
  
  一連の品質不祥事のISO9001的原因は簡単である。原因は会社が不良のない顧客満足の製品を一貫して供給するということにトップマネジメントがコミットメントしていなかったことである。
  
<実務の視点和訳 ⇔JIS和訳>
業務 ⇔ プロセス; 品質経営体制 ⇔ 品質マネジメントシステム; 必要条件 ⇔ 要求事項 

No.3   免震・耐震ダンパーの検査データ改竄不祥事は認証業界の大失態 :H30.11.6
  日本製品が品質で世界を席巻していた1980年代のある日、英国の会社の営業マンが日本企業に部品を売り込みに来た。部品は必要な品質機能も満たし、低価格で魅力的であった。しかし購買担当者は、あの老大国の名も聞いたこともない会社の製品であり、安かろう悪かろうではないかと心配になる。そんな時、営業マンは「我が社は品質日本に倣った製造管理体制の下で材料調達から設計、製造、検査、さらに出荷、輸送まで管理しており、そのことは政府管轄認証機関によって認められ、定期的に監査も受けています。不良品を出さないようしっかり管理していますので安心して下さい」と、鞄からBS5750規格の登録証を持ち出した。
 
  購買担当者はそれなら買ってみようかと考える。そして、納入された製品が契約の通りであり、その後の長い期間の取引でも、受入検査での軽微な不良品はゼロではないが、他の日本企業と遜色ない品質保証水準であることが確認された。品質重視の経営を正しく行ない良い製品を提供する企業が無名でも顧客に選ばれ、発展するきっかけを得ること、これが品質保証規格と認証制度の効用である。英国産業復興のためにサッチャー首相が発案したこのような仕組みが、後にISO9001規格の発行とJABも参画するIAFの下の国際的第三者認証制度に発展した。
 
  ところで、10/21報道の川金HD社による免震・耐震ダンパーの検査データ改竄不祥事では、10/16報道のKYB社の免震ダンパー*1と同様に、制振ダンパーの製品検査不良率は30%とあり得ない高さであり、不良品を再調整工程に回すことなく検査データの書き換えだけで済ましてきた、不正が当該工場での生産開始時点から行われてきた点で同質である。よって実態は検査員の横着によるデータの改竄ではなく、定められた製造方法では大量の検査不良が発生し、再調整に回していると生産活動自体が成り立たないということである。両社の経営者は、このように検査不良品も良品として出荷するという品質保証体制を前提に設備投資を行ない、要員を配置し、手順を定めて、注文をとり、生産活動を行ない、免震・耐震ダンパー製造販売事業を行ってきたということである。
 
  ISO9001の登録証を掲げて、つまり、「我が社は、顧客満足の製品を提供するためのISO9001の製造管理体制に則って製品を製造しており、このことは公正な認証機関から審査を受けて認められています。不良品を出さないようしっかり管理していますので安心て下さい」と嘘をついて注文をとっていた組織が2社になった。 こんな事態においても、JABや認証機関はなお平然としている。
 
*1: No.2.  KYB社の免震改ざん不祥事は検査不正か H30.10.23 

No.2   KYB社の免震改ざん不祥事は検査不正か H30.10.23
   ISO9001認証取得企業による昨秋以降の一連の検査データ改竄不祥事は、一年を経過して9/1の電線大手フジクラに引き続き、10/16には油圧機器メーカーのKYB社の免震・制振装置の性能検査記録データの改竄が報じられた。報道によると、製品の性能検査で不合格となった製品を分解、再調整すべきところが、それには5時間を要し、月120本の検査に検査員が1人しか配置されていなかった等の背景から、検査員が生産計画の日程を守るために再調整の代わりに検査データを改竄した、改竄が8人の検査員に引き継がれてきたとされている。報道は原因をこれまでの検査データ改竄と同種の検査員と現場管理者の品質意識の問題として扱っているが、本質は別のところにあるように思える事実がある。
 
  すなわち、同社が社長名で行ったウェブサイトでの10/16付けの事情説明では、不正の疑いのある2003~2018年の間の免震用ダンパーの出荷総数は5,232本で、この内の検査データを書き換えたものの総数は2,413本である。書き換えは検査で不合格となった不良品に対して行われたとされるから、免震用ダンパーの製品検査不良率は46%ということになる。また、別の一覧表では検査の合格範囲は目標±15ないし10%であるが、不合格品出荷の特にひどい5事例の実績値は目標に対して+16, +18, +20, +32, +42%のはずれというから、平均不良率が46%ということもうなずける製品性能のばらつきの大きさである。
 
  一般に量産品で検査不良率が46%もあり、不良品は手直しして出荷するというような生産活動では、品質保証上、製造コスト上、納期達成上で健全な事業活動の推進はとても無理というのが常識である。同社が、このような製造管理体制で必要な生産を行ない利益を挙げて18年間も事業を継続できてきたということは、経営者以下管理者に検査データの改竄こそが検査の目的であると見做す暗黙の共通認識があり、改竄が前提で要員が配置され、設備投資が行われ、生産活動が行われ、その管理が行われてきた結果であるに他ならない。これに、需給が売手市場であること、及び、出荷した製品の性能が顧客に実際に試される機会がないという製品の特徴が幸いした。
 
  本件不祥事に関しては認証機関には、検査データ改竄を認証審査でなぜ見落したのかというようなことではなく、このような品質保証意識と日常業務及びその管理体制の実態の同社になぜ顧客満足の追求により事業の健全な発展を図る優良企業という証の登録証を発行したのかに関する検討が必要である。

No.1   ISO45001/JIS45001/JISHA-適格OSHMS基準、 労働安全衛生三規格が乱立  : H30.10.10
  9/28付けでISOの労働安全衛生マネジメントシステム規格のJIS版、JISQ45001と共に、いわゆる「日本版マネジメント規格」としてのJISQ45100(安全衛生活動などに対する追加要求事項) が発行された。勧進元の中災防によると、ISO45001に盛り込まれなかったKY活動などの安全衛生活動を織り込んだ日本独自の規格であり、「JISQ45001との一体運用でさらなる安全衛生水準の向上が期待できる」とのである。一方、中災防はこれまで通りJISHA方式適格OSHMS基準認定を続けるので、世評では今後日本では3種類の労働安全衛生マネジメントシステムなるものの認証が行われることになり、どれを選ぶかは組織次第ということだそうだ。
 
  規格化すなわち工業標準化の意義は、「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化してしまう「もの」や「事柄」について、経済・社会活動の利便性の確保、生産の効率化、公正性の確保、技術進歩の促進、安全や健康の保持、環境の保全等のそれぞれの観点から、統一又は単純化すること」とされている。それであるなら3規格が乱立する状況は、規格化で防止しようとする混乱、不利益を社会にもたらすもの以外の何物でもないが、この見方は単純すぎる。
 
  ISO45001は世界の労働安全衛生規範を定め遵守を強制する国際機関ILOが世界標準とは認めていないが、関係者の合意によって決められる民間規格としてはそれは問題ではない。この規格の規定を満たすことが世界標準の労働安全衛生水準を実現し維持する組織であると見做そうという合意の下で組織が規格を用い、認証機関が適合の登録証を発行することに用いられる規格であるからである。認証はそのような世界標準の管理の下でその結果の安全衛生水準を維持する組織であることを顧客や社会に保証するものである。
 
  JISHA認定は厚労省の労働安全行政の一環としての労働基準監督署に対する労災再発防止対策報告のためなど、厚労省傘下のJISHAが組織に労働災害防止ための管理のあり方を指導し、評価し、そのような組織であることを認定するものである。認定は管理体制の不備により重大災害を起こした組織が再発防止を図り、労働安全行政が目指す安全衛生水準を実現、維持するための管理体制づくりを支援することが目的である。ISO45001認証とは目的が異なり規定の狙いも異なるから、両者は併存可能であり、これを乱立と言うことがおかしい。
 
しかし、JISQ45100は、その1章にJISQ45001より組織がやるべき事項を増やして「安全衛生水準の更なる向上を目指すことが目的」と書かれているから、組織や社会にはどちらの安全衛生水準を狙うのかの二者択一の問題である。しかし、実現が期待される安全衛生基準は明確ではないから、実際には選びようがない。しかも、無秩序化して社会を混乱させかねないどういう事情があったのか、どういう統一、単純化なのか、社会にどのような利益をもたらす標準化なのかわからない。
 
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